自動運転と交通空白
全国で2,740地区(892市区町村)に広がる「交通空白」を、令和7〜9年度の集中対策期間にどう解消するかが問われている。10月16日施行の改正地域交通法で自治体が司令塔となる輸送資源の「フル活用」の仕組みができた。一方、自動運転は「2030年度に1万台」の目標に対してレベル4の許可は延べ12件にとどまり、事故時の原因究明と責任の仕組みづくりが残っている。令和9年度概算要求では「交通空白」関係が前年度当初の3倍超に膨らんだ。
選んだ理由:自動運転レベル4、交通空白の解消、地域公共交通の維持。国交省・経産省・警察庁。
中心の会議体・場
- 国土交通省「交通空白」解消本部 国土交通省(本部長:国土交通大臣) · 「交通空白」のリストアップ結果と年次の「取組方針」を決め、予算要求の方向を示す省内の本部。
- 交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会 国土交通省 · 地域交通法の制度改正を審議する場で、2025年12月のとりまとめが2026年改正法の土台になった。
- モビリティワーキンググループ(デジタル社会推進会議) デジタル庁・内閣官房(主査:内閣総理大臣補佐官) · 自動運転など各府省の施策を束ねた「モビリティ・ロードマップ」を毎年まとめ、責任体制の再点検も担う。
- 交通政策審議会 陸上交通分科会 自動車部会 自動運転ワーキンググループ 国土交通省 · 自動運転タクシーの実装に向けて、規制緩和・安全基準・事故原因究明・補償の制度を検討する。
上の会議体は、テーマの中心として手で選んだもの。事業と会議体の自動の紐付け(事務局の課室の一致)は、テーマの事業16件のうち5件。
ブリーフ
対象期間 2026-06-10〜2026-09-29。「読み筋」は資料からの要約・解釈です。
2026.09.01 改正地域交通法の施行準備:10月16日施行を閣議決定、省令・基本方針も改正
国土交通省
- 施行期日政令を9月1日に閣議決定し、9月4日に公布。改正法(令和8年法律第35号、6月10日公布)は10月16日に施行される。
- 施行規則の改正で、新設の「自動車地域旅客運送サービス再構築事業」は公募が原則だが、法定協議会等で関係者の協議が調えば公募なしで事業者を選べることにした。
- 基本方針では、自治体の求めに事業者が応じなくてよい「正当な理由」の例として、経営・営業への不利益、作業負担、自治体側の安全管理体制の不備などを挙げた。法定協議会は全会一致でなくてもよく、多数決もできると明記した。
原文:施行期日政令の概要 / 施行規則改正の概要 / 基本方針の主な変更点 / 関連法令ページ
2026.08.28 令和9年度概算要求:「交通空白」関係は835億円(3.61倍)、自動運転トラックに18億円
国土交通省
- 省全体の「交通空白」解消の項目は835億円で、前年度の3.61倍。地域公共交通確保維持改善事業などは通常枠270億円(1.31倍)と投資枠495億円の計765億円を要求した(前年度はR7補正352億円+R8当初206億円)。
- 民間の試算として、「交通空白」による経済・社会的損失を年間約10兆円と紹介し、交通空白対策を「成長投資」と位置づけた。
- 物流・自動車局は、自動運転トラック実装加速化事業に18億円(前年度100万円未満)、レベル4の法規要件の深化に2.54億円(1.1倍)、高度安全運転支援システムの普及促進に4億円(新規)を要求した。
原文:国交省 R9概算要求概要 / 総合政策局 R9概算要求 / 物流・自動車局 R9概算要求 / 自動運転ラボ(9/5)
2026.07.21 モビリティ・ロードマップ2026:2027年度からの実装を見すえ、AI自動運転と責任体制を柱に
デジタル庁
- 特定自動運行(レベル4相当)の許可は2026年5月時点で延べ12件。2025年度は60か所以上で実証が行われたが、多くは短期・限定的な実証にとどまると認めた。
- 目標は「2030年度までに自動運転サービス車両を1万台導入」と「2030年代に世界販売シェア約25%」。E2E(エンドツーエンド)型AIの開発支援と、判断根拠が見えにくいAIの安全性評価手法の確立を並べて掲げた。
- 事故原因究明は、運輸安全委員会での調査体制づくりに向け「法制度の整備も含めて」検討を続け、責任体制も2026年度以降に再点検するとした。
原文:ロードマップ2026 概要 / ロードマップ2026 本文 / モビリティWG
2026.07.14 次世代ITS通信研究会 第3期報告書(6/23)を受けて「自動運転社会を支える通信インフラ戦略」を策定
総務省
- 研究会は2025年9月から第3期を開き、報告書案への意見募集(4月29日〜6月2日)には37件の意見が寄せられた。6月23日に報告書を公表した。
- 7月14日、報告書の提言を踏まえ、通信インフラの強化と技術・サービスの実装に向けた取組をまとめた「通信インフラ戦略」を、総務副大臣の主導で策定した。
原文:第3期報告書の公表 / 通信インフラ戦略の公表
2026.06.10 「交通空白」解消本部 第6回:取組方針2026、交通空白は2,740地区に
国土交通省
- 2026年のリストアップ調査(5月15日集計)で、対応が必要な「交通空白」地区は2,740地区(前年2,057から+683)、892市区町村、居住人口1,720万人となった。新たに把握された地区が547あった。
- 前年に把握した2,057地区のうち、対策を実施中の地区は548から1,300に増えた。
- 大臣は、年末までに交通空白の影響を定量化して成長戦略として位置づけるよう指示し、自動運転については環境整備を急ぐよう求めた。
原文:取組方針2026(本文) / 取組方針2026(概要) / 議事要旨
次に来ること
- [2026年10月16日] 改正地域交通法の施行 再構築事業、施設送迎の担い手の協議会参加、連携促進団体、データ提供の応諾義務が動き出す。公共ライドシェアの実施主体に一部事務組合・広域連合・都道府県などを加える法令改正も、施行に合わせて行うとされている。 · 根拠
- [2026年12月まで] 「交通空白」の影響の定量化と成長戦略での位置づけ 6月の本部で大臣が年末までの整理を指示した。 · 根拠
- [2026年末] 令和9年度予算の政府案で、交通空白の投資枠495億円がどう扱われるか 通常枠270億円に対し、投資枠が要求の約3分の2を占める。 · 根拠
- [2027年度] 自動運転タクシー・自動運転トラックの社会実装の見込み 第3次交通政策基本計画とロードマップ2026は2027年度の実装を見込み、事故原因究明の法整備を含めた検討を続けるとしている。 · 根拠
流れ
| 日付 | できごと | 種類 |
|---|---|---|
| 2024.07.17 | 国土交通省「交通空白」解消本部を設置、第1回会合 国土交通省 | 会議 |
| 2024.09.04 | 「交通空白」解消本部 第2回で「日本版ライドシェアのバージョンアップとりまとめ(第1弾)」 国土交通省 | 報告書 |
| 2024.09.30 | 交通政策審議会に自動運転ワーキンググループを設置(自動運転タクシーの制度を検討) 国土交通省 | 会議 |
| 2025.05.30 | 自動運転WGが中間とりまとめ。運輸安全委員会を念頭に事故調査機関の在り方を整理 国土交通省 | 報告書 |
| 2025.05.30 | 「交通空白」解消本部 第4回で「取組方針2025」、交通空白を2,057地区と把握 国土交通省 | 計画・決定 |
| 2025.06 | モビリティ・ロードマップ2025を公表 デジタル庁 | 計画・決定 |
| 2025.12.26 | 地域公共交通部会がとりまとめ。共同化・協業化、連携促進団体、データ提供の義務化などを提言 国土交通省 | 報告書 |
| 2026.01.16 | 第3次交通政策基本計画を閣議決定。自動運転サービス車両を2030年度に1万台とする目標 内閣 | 計画・決定 |
| 2026.03 | 総合物流施策大綱を閣議決定。レベル4自動運転トラックの早期社会実装を盛り込む 内閣 | 計画・決定 |
| 2026.03.10 | 地域公共交通活性化再生法の改正案を閣議決定 内閣 | 法律 |
| 2026.06.03 | 改正地域交通法が成立(6月10日公布、令和8年法律第35号) 国会 | 法律 |
| 2026.06.10 | 「取組方針2026」を決定。交通空白は2,740地区に 国土交通省 | 計画・決定 |
| 2026.06.23 | 次世代ITS通信研究会が第3期報告書を公表(7月14日に通信インフラ戦略) 総務省 | 報告書 |
| 2026.07.21 | モビリティ・ロードマップ2026を公表。レベル4の許可は延べ12件(5月時点) デジタル庁 | 計画・決定 |
| 2026.08.28 | 令和9年度概算要求。「交通空白」解消に835億円(3.61倍) 国土交通省 | 予算 |
| 2026.09.01 | 改正地域交通法の施行期日を10月16日とする政令を閣議決定 内閣 | 法律 |
論点
| 論点 | 立場A | 立場B | いま |
|---|---|---|---|
| 自治体へのデータ提供を事業者に義務づける範囲 | 大串委員(部会第27回):補助金が1円でも入っている路線は、きちんとデータを出してもらいたい。 | 部会とりまとめ・基本方針:必要性が特に高い場合に限って応じる義務とし、経営・営業への不利益などを「正当な理由」として例外にする。 | 義務は10月16日から施行。例外の運用とガイドラインの見直しは続く。 |
| 路線の休廃止と法定協議会の拘束力 | 吉田臨時委員(部会第27回):地域公共交通計画で重要と書いた路線を勝手にやめるなら、計画を改定してからにすべき。 | 部会とりまとめ・基本方針:休廃止の情報を事前に出すのは努力義務にとどめ、協議会では多数決もできると明記。 | 基本方針で明確化した。拘束力の強化までは踏み込んでいない。 |
| 公共ライドシェアの担い手と持続性 | 部会とりまとめ:一部事務組合、広域連合、都道府県などを実施主体に加え、広域の需要に対応する。 | 田中オブザーバー(全国ハイヤー・タクシー連合会、部会第27回):公共ライドシェアはボランティア的で長続きしていない。最後は財源の問題。 | 実施主体の拡大は、改正法の施行に合わせて法令改正する予定。 |
| 交通空白対策の財源 | 〜R8:R7補正352億円+R8当初206億円の組み合わせ(補正予算の比重が大きい)。 | R9概算要求:当初予算で765億円。うち495億円は「強く豊かな日本」投資枠で、「成長投資」と位置づけ。 | 年末の予算編成で決まる。 |
| 自動運転の事故原因究明の担い手 | 現行:警察庁と国交省が外部委託し、交通事故総合分析センター内の「自動運転車事故調査委員会」で調べる。 | 自動運転WG中間とりまとめ・ロードマップ2026:運輸安全委員会を念頭に、法制度の整備も含めて事故調査の体制を検討。 | 検討が続いており、法案の時期は示されていない。 |
| AI(E2E)型自動運転の推進と安全性評価 | ロードマップ2026(成長戦略):米中との技術差に対応するため、E2Eの開発、データ・計算資源の確保、L2++車両の優良認定を進める。 | ロードマップ2026(課題認識):高度なAIは判断根拠がブラックボックスなので、シミュレーション等による安全性評価手法をまず確立する必要がある。 | どちらも2026年度以降の工程表に載っており、並行して進める。 |
| 自動運転の目標と実績の差 | 第3次交通政策基本計画:2030年度に自動運転サービス車両を1万台。 | ロードマップ2026:レベル4の許可は延べ12件(2026年5月)。多くの地域で実証は短期・限定的と認める。 | 2027年度の自動運転タクシー・トラックの実装が最初の試金石になる。 |
立場は、地域公共交通部会第27回(2025年12月16日)議事録、部会とりまとめ(2025年12月26日)、基本方針の変更点(2026年9月)、国交省R9概算要求、モビリティ・ロードマップ2026、国交省自動運転WGのページ、警察庁の自動運転ページによる。
人
中心の会議体の構成員(公開名簿より)。
交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会
名簿の時点 2025年12月26日時点(委員等名簿)
- 山内 弘隆 部会長 一橋大学名誉教授
- 池之谷 潤 全日本交通運輸産業労働組合協議会議長
- 大井 尚司 大分大学経済学部門教授
- 大串 葉子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授
- 清水 希容子 島根大学材料エネルギー学部教授
- 須田 義大 東京工科大学片柳研究所教授 未来モビリティ研究センター長
- 竹内 健蔵 東京女子大学現代教養学部教授
- 羽藤 英二 東京大学大学院工学系研究科教授
- 原田 文代 日本政策投資銀行常務執行役員
- 阿部 守一 臨時委員 長野県知事
- 加藤 博和 臨時委員 名古屋大学大学院環境学研究科教授
- 河合 優子 臨時委員 西村あさひ法律事務所弁護士
- 熊谷 雄一 臨時委員 青森県八戸市長
- 松井 一實 臨時委員 広島県広島市長
- 吉田 樹 臨時委員 福島大学経済経営学類教授、前橋工科大学学術研究院特任教授
お金
このテーマに束ねた16事業。令和7年度当初 260億円 → 令和8年度要求 323億円。
| 事業 | 府省 | 当初 | 要求 |
|---|---|---|---|
| 地域公共交通確保維持改善事業 | 国土交通省 | 207億円 | 263億円 |
| 無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業 | 経済産業省 | 48.4億円 | — |
| 自動運転(レベル4)法規要件の策定 | 国土交通省 | 1.9億円 | 2.3億円 |
| 地域公共交通確保維持改善事業 | 復興庁 | 1.4億円 | 1.3億円 |
| 自動運転の拡大に向けた取組 | 警察庁 | 0.51億円 | 0.51億円 |
| 自動運転に対応した道路整備に係る調査・検討 | 国土交通省 | 0.49億円 | — |
| 自動運転における損害賠償責任に関する調査事業 | 国土交通省 | 0.31億円 | 0.22億円 |
| 地域公共交通維持・活性化推進事業 | 国土交通省 | 0円 | 24.7億円 |
| モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援事業 | 経済産業省 | 0円 | — |
| 自動運転等の先行実装のためのデジタルライフライン整備事業 | 経済産業省 | 0円 | — |
| 自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備事業 | 総務省 | 0円 | 20.5億円 |
| 社会資本整備総合交付金(地域公共交通再構築事業) | 国土交通省 | 0円 | — |
| 地域の移動課題解決に向けた自動運転サービス開発・実証支援事業 | 経済産業省 | 0円 | — |
| 自動運転サービス支援道に必要な各種基準等・パッケージの作成に係る調査検討経費 | 国土交通省 | 0円 | 0.40億円 |
| 無人自動運転サービス実装推進事業 | 経済産業省 | 0円 | 10.0億円 |
| 自動運転車が関係する交通事故防止対策事業 | 国土交通省 | 0円 | 0.20億円 |
注目点
- 10月16日の改正地域交通法施行後、最初の「自動車地域旅客運送サービス再構築事業」がどの地域で、公募と協議のどちらで始まるか。
- 公共ライドシェアの実施主体を広域連合・都道府県などに広げる法令改正の中身と時期。
- 年末の予算編成で、交通空白の投資枠495億円と自動運転トラック18億円がどこまで認められるか。
- 運輸安全委員会による自動運転事故調査の法整備が、2027年度の自動運転タクシー実装に間に合う形で法案になるか。
- 集中対策期間(令和7〜9年度)の最終年度に向け、2027年のリストアップ調査で交通空白が減りに転じるか。
出典
- 国交省「交通空白」解消本部
- 「交通空白」解消に向けた取組方針2026
- 交通空白解消本部 第6回 議事要旨
- 地域公共交通部会(開催状況)
- 地域公共交通部会 とりまとめ(報道発表)
- 地域公共交通部会 とりまとめ概要
- 地域公共交通部会 第27回 議事録
- 地域公共交通部会 委員等名簿(2025/12/26)
- 改正法案の閣議決定(2026/3/10)
- 改正法の概要
- 地域交通 関連法令(令和8年改正)
- 施行期日政令の概要
- 基本方針の主な変更点
- 施行規則改正の概要
- 国交省 令和9年度概算要求
- 国交省 R9概算要求概要
- 総合政策局 R9概算要求概要
- 物流・自動車局 R9概算要求概要
- モビリティワーキンググループ
- モビリティ・ロードマップ2026 本文
- モビリティ・ロードマップ2026 概要
- 自動運転ワーキンググループ
- 次世代ITS通信研究会
- 次世代ITS通信研究会 第3期報告書
- 自動運転社会を支える通信インフラ戦略
- 警察庁 自動運転
- 自動運転ラボ:自動運転予算、国交省が「2800倍」要望
この解説は、AI が公開資料と報道を読んで出典つきでまとめ、別の AI が抜き取りで事実確認したものです。数字や日付は出典で確かめてから使ってください。誤りは [email protected] へ。