マイナンバーと医療DX
マイナンバーカードは2025〜27年度に更新が集中する一方、次期カードの導入は令和11年度(2029年度)中へと後ろ倒しになった。医療側では従来の保険証の暫定的な取扱いが2026年7月末で終わり、焦点は電子処方箋・電子カルテを医療機関に広げる段階に移っている。カードの発行・交付は総務省、利活用はデジタル庁、保険証と医療DXは厚労省に分かれており、そのつなぎ目が問われている。
選んだ理由:カードの更新期を迎えた発行・交付経費と、マイナ保険証・電子処方箋の普及策が、総務省・厚労省・デジタル庁の3か所に分かれている。
中心の会議体・場
- 社会保障審議会 医療保険部会 厚生労働省 · マイナ保険証の運用、電子処方箋の進捗、医療情報化推進方針案など、医療保険と医療DXの制度運用を議論する場。
- デジタル技術を活用した効率的・効果的な住民基本台帳事務等のあり方に関する検討会 総務省 · 住民基本台帳とマイナンバーカード関連事務について、市町村の負担をデジタル技術で減らす方策を検討する場(2026年7月発足)。
- マイナンバーカードの普及・利用の推進に関する関係省庁連絡会議 デジタル庁 · デジタル大臣を議長に、カードの普及・利活用とマイナ保険証の利用について政府全体で調整する場。
上の会議体は、テーマの中心として手で選んだもの。事業と会議体の自動の紐付け(事務局の課室の一致)は、テーマの事業27件のうち11件。
ブリーフ
対象期間 2026-07-01〜2026-09-29。「読み筋」は資料からの要約・解釈です。
2026.08.27 医療保険部会 第213回:医療情報化推進方針案と電子処方箋の進捗
厚生労働省
- 医療法等改正法にもとづき厚労大臣が作る「医療情報化推進方針」の案を提示。第1期は2026年10月1日〜2030年3月31日で、支払基金は同年10月に「DX審査支払機構」へ改組される。
- 目標は、2028年度までに200床以上の病院(療養病床等が中心の病院を除く)で電子カルテ普及率100%、2030年末までに電子カルテ普及率約100%と地域の拠点病院のサイバー対策100%。2026年度は電子カルテ情報共有サービスを冬を目途に全国で運用開始するとした。
- 電子処方箋の導入率は2026年6月時点で41.3%(病院20.9%、医科診療所29.5%、歯科診療所10.7%、薬局90.5%)。薬局での調剤結果登録の割合は94%超(推計値)。
- 歯科の医療DX工程表(案)も提示。歯科診療所向け電子カルテの標準仕様を令和8年度中に策定し、令和9年度中に普及開始を目指す。
原文:会議ページ / 資料3 医療情報化推進方針案等 / 資料4 電子処方箋の進捗
2026.08.25 マイナアプリの提供開始
デジタル庁
- マイナポータルアプリとデジタル認証アプリを統合した「マイナアプリ」の提供を開始。
- 重点計画は、官民のサービスでカードを使った本人確認等を一つのアプリで完結させ、デジタル認証サービスの利活用を広げるねらいを示している。
2026.07.29 住民基本台帳事務等のあり方検討会 第1回:更新ラッシュ下の市町村負担が議題に
総務省
- 前身のWG(2025年4月〜2026年3月、全6回)の最終とりまとめを土台に発足。カードと電子証明書の更新が急増する見込みを課題とし、交付前設定のJ-LISへの集約化や送付先情報の最新化作業の自動化などの効率化を進めるとした。
- 市町村が送る「住民票コード記載通知」について、J-LISの個人番号通知書との一体化や通知の廃止を求める地方分権提案を示した。政府方針は令和8年度中を目途に結論を得るとしている。
- 議事概要では、住基ネット利用の徹底のフォローアップ、住基端末へのアクセスのあり方、住基ネット統一文字への民間対応が論点に挙がった。
原文:第1回 会議ページ / 資料2 事務局提出資料1 / 資料3 住民票コード記載通知 / 議事概要
2026.07.21 デジタル社会の実現に向けた重点計画を閣議決定:次期カードは令和11年度中
デジタル庁
- 次期マイナンバーカードは、関連システムの対応が多いことを踏まえ、より強固な暗号方式を備えたカードの「令和11年度中の導入を目指す」とした。
- Android端末には、電子証明書に加えて基本4情報等を令和8年秋頃に搭載することを目指す。
- マイナポータルの代理人機能に、親権者と子など法的関係を確認できる機能を令和8年度に追加する。
原文:重点計画ページ / 本文 / Impress Watch
次に来ること
- [2026年10月1日(予定)] 支払基金が「DX審査支払機構」に改組、医療情報化推進方針の第1期が始まる 方針案は8月27日の医療保険部会に示された。機構の中期計画と年度計画、それに対する厚労大臣の評価の仕組みが動き出す。 · 根拠
- [2026年秋頃(予定)] Android端末への基本4情報等の搭載 重点計画の目標。iPhoneに続き、スマホだけで本人確認ができる範囲が広がる。 · 根拠
- [2026年冬目途(予定)] 電子カルテ情報共有サービスの全国運用開始 医療情報化推進方針案の2026年度の主な取組に記載。電子処方箋を医療機関に広げる前提にもなる。 · 根拠
流れ
論点
| 論点 | 立場A | 立場B | いま |
|---|---|---|---|
| 次期カードの導入時期 | 当初は2028年度の導入予定だったと報道(Impress Watch) | 重点計画2026:関連システムの対応や暗号方式の検討を踏まえ「令和11年度中の導入を目指す」 | 後ろ倒しで決着。更新集中期は現行カードで対応 |
| 電子証明書の有効期間と更新負担 | 次期TF(2024):電子証明書を5年から10年に延ばし、更新申請は有効期限の1年前から可能に | 連絡会議(2026.3):現行は証明書5年のため、25〜27年度に年2,000万〜2,800万件規模の更新を見込む | 現行ルールのまま更新ピークに。総務省の検討会で交付事務の効率化を議論中 |
| 住民票コード記載通知 | 中核市市長会(宮崎市)の提案:J-LISの個人番号通知書と一体化、通知自体の廃止も検討を | 政府の対応方針(2025.12.23閣議決定):J-LISが行うことも含めて負担軽減策を検討し、令和8年度中目途に結論 | 継続。7月29日の検討会で論点として提示 |
| 電子処方箋の医療機関への導入 | 工程表(2023):2025年3月までに、オンライン資格確認を導入した概ねすべての医療機関・薬局へ | 推進チーム(2025.7):電子カルテを整備するすべての医療機関へ、電子カルテの更改時に一体で導入 | 目標を置き直した。2026年6月時点で病院20.9%、医科診療所29.5%、薬局90.5% |
| 電子カルテ普及の道筋 | 工程表(2023):遅くとも2030年に、概ねすべての医療機関で情報共有のための電子カルテを | 推進方針案(2026.8):2028年度に200床以上の病院で100%、クラウドネイティブ型へ移行。歯科は別の工程(標準仕様をR8年度中に策定) | 方針案を提示済み。第1期は10月開始の予定 |
| マイナ保険証の利用率の数え方 | 厚労省(第212回資料):利用人数÷レセプト件数で68.15%(R8.4) | 保団連:厚労省の公表データから算出した「利用件数の割合」で50.4%(2026年8月) | 定義が違うため数字が食い違う。政府は医療DXの政策ダッシュボードの公表を掲げる |
A・Bは会議資料・計画本文・報道の要旨。数字は原文どおり。利用率の2つの数字は分母が異なる可能性があり、定義は原資料で確認が必要。
人
中心の会議体の構成員(公開名簿より)。
社会保障審議会 医療保険部会
名簿の時点 第213回(2026-08-27)配付の委員名簿(本委員・臨時委員から15人を抜粋。専門委員は省略)
- 岩村 正彦 部会長 東京大学名誉教授
- 野口 晴子 部会長代理 早稲田大学政治経済学術院教授
- 内堀 雅雄 全国知事会社会保障常任委員会委員長/福島県知事
- 林 鉄兵 日本労働組合総連合会副事務局長
- 伊奈川 秀和 小田原短期大学ライフデザイン総合学科特任教授
- 大杉 和司 日本歯科医師会常務理事
- 北川 博康 全国健康保険協会理事長
- 城守 国斗 日本医師会副会長
- 島 弘志 日本病院会副会長
- 中村 さやか 上智大学経済学部教授
- 任 和子 日本看護協会副会長
- 原 勝則 国民健康保険中央会理事長
- 横本 美津子 日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長
- 米川 孝 健康保険組合連合会副会長・専務理事
- 渡邊 大記 日本薬剤師会副会長
デジタル技術を活用した効率的・効果的な住民基本台帳事務等のあり方に関する検討会
名簿の時点 構成員名簿(第1回 2026-07-29 時点)
- 大屋 雄裕 座長 慶應義塾大学法学部教授
- 小尾 高史 東京科学大学総合研究院教授
- 海藤 敏之 山形県大石田町企画情報課長
- 柿崎 淑郎 東海大学情報通信学部教授
- 楠 正憲 デジタル庁統括官
- 小林 崇 千葉市総務局情報経営部業務改革推進課長
- 小堀 陽平 鳥取県地域社会振興部市町村課長
- 櫻井 美穂子 国際大学大学院国際経営学研究科准教授
- 杉田 剛 狛江市企画財政部未来戦略室長
- 巽 智彦 東京大学大学院法学政治学研究科准教授
- 早川 有紀 関西学院大学法学部教授
- 松前 恵環 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授
- 三輪 貴大 東京都総務局行政部行政企画担当課長
お金
このテーマに束ねた27事業。令和7年度当初 208億円 → 令和8年度要求 837億円。
注目点
- 2026年10月1日(予定)に支払基金がDX審査支払機構へ改組され、医療情報化推進方針の第1期(〜2030年3月)が始まる。方針の最終決定と中期計画の中身が焦点。
- 電子カルテ情報共有サービスの全国運用(2026年度冬目途)と、医療機関での電子処方箋の導入率(病院20.9%、医科診療所29.5%)がどこまで上がるか。
- Android端末への基本4情報等の搭載(2026年秋頃目標)と、マイナアプリを通じた民間の本人確認での利用の広がり。
- 総務省の検討会で、更新集中期(26年度2,020万件、27年度2,810万件の見込み)に向けた交付事務の効率化と、住民票コード記載通知の見直し(令和8年度中目途に結論)がどうまとまるか。
- 次期マイナンバーカード(令和11年度中の導入目標)の暗号方式や券面の仕様が、関係府省庁の検討でどう固まるか。
出典
- 厚労省 第213回医療保険部会 資料
- 厚労省 第213回 資料3 医療情報化推進方針案等について
- 厚労省 第213回 資料4 電子処方箋の進捗状況と今後の対応
- 厚労省 第212回医療保険部会 資料
- 厚労省 第212回 資料3 マイナ保険証の円滑な利用について
- 厚労省 第214回医療保険部会 資料
- 総務省 住民基本台帳事務等のあり方に関する検討会
- 総務省 同検討会 第1回 議事概要
- デジタル庁 関係省庁連絡会議 第8回
- デジタル庁 重点計画(2026年7月21日閣議決定)
- デジタル庁 次期個人番号カードTF 最終とりまとめ(案)概要
- 内閣官房 医療DXの推進に関する工程表
- 内閣官房 デジタル行財政改革 取りまとめ2026
- 厚労省 医療法等改正法の成立について(報告)
- 厚労省 マイナ保険証と資格確認書について(2025年9月)
- 日本医事新報 暫定措置の7月末までの延長
- 保団連 マイナ保険証利用件数の割合(2026年8月)
- Impress Watch 重点計画・次期マイナカード
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