宇宙
令和9年度の宇宙関係予算は11府省等で概算要求1兆791億円(+事項要求)に達し、政府は2027年春の次期「宇宙基本計画」改定に向けて論点整理を始めた。安全保障と産業化を一体で進める方針のもと、射場・打上げ高頻度化、宇宙戦略基金の継続、JAXAの役割と体制、宇宙活動法の残課題が問われている。
選んだ理由:JAXA、情報収集衛星、準天頂衛星、防衛省の宇宙領域、宇宙戦略基金まで11府省。令和8年度要求は当初予算の1.5倍。
中心の会議体・場
- 宇宙政策委員会 内閣府 · 宇宙基本計画・工程表、宇宙戦略基金、各府省の宇宙関係予算を審議する政府の中心的な審議会。
- 宇宙開発戦略本部 内閣(本部長:内閣総理大臣) · 宇宙基本計画と工程表の改訂を決定する閣僚レベルの本部。
- 宇宙活動法基準・安全小委員会 内閣府(宇宙政策委員会の下) · 宇宙活動法の許可基準に係る内閣府令(施行規則)や打上げ安全の基準を審議する。
- 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 宇宙開発利用部会 文部科学省 · JAXAの研究開発方針、H3ロケット失敗の原因究明、文科省の中長期推進方策を審議する。
上の会議体は、テーマの中心として手で選んだもの。事業と会議体の自動の紐付け(事務局の課室の一致)は、テーマの事業40件のうち14件。
ブリーフ
対象期間 2026-07-01〜2026-09-29。「読み筋」は資料からの要約・解釈です。
2026.09.28 宇宙政策委員会 第124回:R9概算要求は1兆791億円、次期宇宙基本計画の論点整理が始動
内閣府
- 令和9年度宇宙関係予算の概算要求等は1兆791億円(+事項要求)、うち「強く豊かな日本」投資枠5,357億円。前年度(R8当初+R7補正等)1兆446億円から+3%。宇宙戦略基金は3省合計1,286.5億円を要求(R7補正は2,000億円)。
- 事務局が「宇宙基本計画改定の論点整理に向けたポイント」を提示。宇宙を「国家インフラ」と位置付け、打上げ能力は2030年代前半に年30件・中長期に年50件を明記すべきではないか、射場を国家インフラとして整備すべきではないか、などを問いかけた。
- 改定スケジュール案:10〜11月に部会・小委で分野別議論、12月頃に論点整理、R9年1〜2月頃に骨子、5月頃に委員会了承のうえ閣議決定。
- 委員からは、予算を基本計画の4本柱にひもづけて整理すること、「宇宙の平和的利用」への言及、月への巨額投資の国民への説明を求める意見が出た。
原文:議事次第 / 議事要旨 / 資料1-1 R9概算要求 / 資料3-1 論点整理に向けたポイント / 資料3-2 改定スケジュール案
2026.09.07 宇宙活動法基準・安全小委員会 第5回:改正法を受けた施行規則・審査基準の改正案を審議開始
内閣府
- 改正宇宙活動法(令和8年法律第39号、6月17日公布)は公布から1年以内に施行されるため、施行規則等を令和9年6月16日までに施行する必要がある。
- 施行規則の題名を「宇宙ロケットの打上げ及び特定人工衛星の管理に関する法律施行規則」に改める案と、審査基準・標準処理期間の新旧対照表を示した。
- 今後の予定:11月24日に第6回、12月にパブリック・コメント、令和9年2月16日に第7回。
原文:委員会資料4-4(小委の議論と日程) / 小委員会ページ
2026.08.26 宇宙開発利用部会 第108回:中長期推進方策の骨子案、H3 9号機の成功とMMX打上げ日
文部科学省
- 「文部科学省 中長期の宇宙研究開発の推進方策」の取りまとめに向けた骨子案を提示。JAXAの役割が拡大する一方で当初予算(運営費交付金等)は減少傾向、物価高騰で実質目減りしているとの現状認識を示した。
- H3ロケット9号機(8月11日)は、剥離リスクを排除したファスナ結合方式の衛星搭載アダプタを初適用し、「みちびき7号機」を所定の軌道に投入。サービス提供開始は2027年3月頃の予定。
- H3ロケット10号機による火星衛星探査機MMXの打上げ予定日を10月20日と報告。
原文:配付資料 / 資料108-3-3 骨子案 / 資料108-4 直近のトピックス
2026.07.23 宇宙開発利用部会 第107回:H3ロケット8号機失敗の報告書案
文部科学省
- 調査・安全小委員会が報告書案を提出。衛星搭載アダプタ(PSS)の製造工程で生じた剥離がフェアリング分離時の衝撃で進展し破損したことを主要因と特定した。
- 6月12日のH3 6号機(30形態試験機)で補修方式PSSが正常に機能し、直接要因の特定結果の妥当性を確認したとしている。
- 背後要因としてリスク識別の手法と試験検証の網羅性の課題を抽出し、第三者視点の審査やチェック体制の強化などを再発防止策に挙げた。
原文:配付資料 / 資料107-1 報告書案
次に来ること
- [2026年10月20日] H3ロケット10号機で火星衛星探査機MMXを打上げ(予定) 予備期間は11月7日まで。総開発費553億円、世界初の火星圏サンプルリターンを目指す。 · 根拠
- [2026年10〜11月] 宇宙政策委員会の部会・小委員会で分野別に基本計画改定を議論(予定) 9月28日の委員会の指摘を部会・小委員会で引き継ぐ。 · 根拠
- [2026年11月24日〜12月] 宇宙活動法基準・安全小委員会 第6回、施行規則改正案のパブリック・コメント(予定) 改正法の施行規則等は令和9年6月16日までに施行が必要。 · 根拠
- [2026年12月頃] 宇宙政策委員会で次期「宇宙基本計画」の論点整理(予定) その後、R9年1〜2月頃に骨子案、5月頃に計画案を了承し閣議決定の見通し(事務局による見通しで変更の可能性あり)。 · 根拠
流れ
| 日付 | できごと | 種類 |
|---|---|---|
| 2023.06.13 | 現行の宇宙基本計画を閣議決定、宇宙安全保障構想を本部決定 宇宙開発戦略本部 | 計画・決定 |
| 2024.04.26 | 宇宙戦略基金 基本方針を決定(10年間で総額1兆円規模の支援) 内閣府・総務省・文科省・経産省 | 計画・決定 |
| 2024.09.26 | 宇宙活動法の見直しに関する小委員会が初会合 内閣府 | 会議 |
| 2024.12.24 | 宇宙基本計画工程表を改訂 宇宙開発戦略本部 | 計画・決定 |
| 2025.03.25 | 宇宙活動法の見直しの基本的方向性 中間とりまとめ 内閣府 | 報告書 |
| 2025.07.28 | 「宇宙領域防衛指針」を公表 防衛省 | 計画・決定 |
| 2025.12.09 | 宇宙活動法の見直しの基本的方向性 最終とりまとめ 内閣府 | 報告書 |
| 2025.12.22 | H3ロケット8号機が打上げ失敗、「みちびき5号機」を喪失 JAXA | 出来事 |
| 2025.12.23 | 宇宙基本計画工程表(令和7年度改訂)を決定(持ち回り) 宇宙開発戦略本部 | 計画・決定 |
| 2026.02.25 | 宇宙戦略基金 基本方針を改定、第三期の実施方針を策定 内閣府・総務省・文科省・経産省 | 計画・決定 |
| 2026.03.27 | 宇宙活動法等改正案を国会に提出 内閣 | 法律 |
| 2026.04.22 | H3ロケット8号機失敗の中間報告書を宇宙開発利用部会が決定 文部科学省 | 報告書 |
| 2026.06.11 | 改正宇宙活動法が成立(6月17日公布、令和8年法律第39号) 国会 | 法律 |
| 2026.06.12 | 工程表改訂に向けた重点事項を決定、総理が宇宙基本計画改定の作業加速を指示 宇宙開発戦略本部 | 計画・決定 |
| 2026.06.12 | H3ロケット6号機(30形態試験機)打上げ成功、8号機失敗後初の打上げ JAXA | 出来事 |
| 2026.07.21 | 「日本成長戦略」を閣議決定(宇宙分野の官民投資を含む) 内閣 | 計画・決定 |
| 2026.07.23 | H3ロケット8号機失敗の報告書案を宇宙開発利用部会で審議 文部科学省 | 報告書 |
| 2026.08.11 | H3ロケット9号機で「みちびき7号機」を打上げ成功 JAXA | 出来事 |
| 2026.09.28 | 宇宙政策委員会でR9宇宙関係予算の概算要求1兆791億円を報告、基本計画改定の論点整理が始動 内閣府 | 予算 |
論点
| 論点 | 内閣府事務局「論点整理に向けたポイント」(R8.9.28) | 委員意見・文科省骨子・予算資料 | いま |
|---|---|---|---|
| 打上げ高頻度化と射場 | 2030年代前半に年30件、中長期に年50件を明記すべきではないか。射場は「国家インフラ」として整備し、国の役割を検討すべきではないか。 | 委員:国・自治体がある程度整備・管理することが重要。基幹ロケットが民間イノベーションを促す環境が必要(議事要旨)。経産省はR9で射場・試験施設整備に683億円を要求。 | 基本計画改定で議論 |
| 宇宙戦略基金の規模と継続 | ステージゲート審査を踏まえた勝ち筋への集中投資と、アンカーテナンシー確保まで10年先を見据えた対応をすべきではないか。 | R9要求は3省合計1,286.5億円(R7補正は2,000億円)。委員:基金の要求額が減っていく中、衛星製造コストは10年前比で数倍に増加しているとの指摘。 | R9予算編成で決着 |
| JAXAの役割と基盤経費 | 役割拡大を踏まえ技術基盤・人的資源を強化すべきではないか。事業化での橋渡しは本来の研究開発へのリソース配分に配慮しつつ検討。 | 文科省骨子案:JAXAの事業規模は5年前比10%以上増の一方、当初予算は減少傾向で物価高騰により実質目減り。H3 8号機報告書案は検証体制の課題を指摘。 | 文科省が推進方策を取りまとめ中 |
| 安全保障と平和利用 | 安全保障の確保と宇宙産業の発展を総合的・一体的に進めるべき。「三文書」の改定も予定。 | 委員:宇宙基本法の「宇宙の平和的利用」への言及が重要。防衛省の機動対応宇宙システムのような取組は国際的な規範との整合が必要。 | 継続 |
| 月面探査への投資 | 有人与圧ローバで日本人の月面着陸を実現し、国際協調・政府投資に加え民間投資を促進すべき。 | 委員:月への巨額投資について、なぜ日本が月に行くのか国民への説得性を改めて整理すべき。ISSの官から民への移行の苦労を踏まえ、民間参入を最初から議論すべき。 | 継続 |
| 宇宙活動法の残課題 | 令和8年改正で捉えきれていない再突入・サブオービタル飛行等は、国会での指摘も踏まえ制度整備を継続すべきではないか。 | 改正法はダミーペイロードでの試験打上げの許可・政府補償、人工衛星に当たらない物体の認定制度を創設。施行規則は基準・安全小委で審議中。 | 施行規則は令和9年6月16日までに施行、残課題は未着手 |
| 司令塔機能と宇宙庁構想 | 与党や経済界からの宇宙庁構想を含む提案も踏まえ、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の体制強化を図るべきではないか。 | 委員:予算が府省別の取りまとめになっており、基本計画の4本柱へのひもづけを事務局で整理すべき。ロケット・射場の全体取りまとめ体制に期待。 | 基本計画改定で議論 |
第124回宇宙政策委員会の資料3-1、議事要旨、資料1-1、宇宙開発利用部会第107回・第108回の資料から要約。事務局資料の語尾(「ではないか」)は問いかけの段階であることを示すため残している。
人
中心の会議体の構成員(公開名簿より)。
宇宙政策委員会
名簿の時点 令和8年7月31日更新
- 澤田 純 委員長 NTT株式会社 取締役会長
- 常田 佐久 委員長代理 千葉工業大学天文学研究センター 所長
- 石井 由梨佳 上智大学法学部 教授
- 栗原 美津枝 株式会社日本政策投資銀行 設備投資研究所 シニアエグゼクティブフェロー
- 櫻井 敬子 学習院大学法学部 教授
- 白坂 成功 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授
- 鈴木 一人 東京大学大学院公共政策学研究部 教授
- 松尾 亜紀子 慶應義塾大学理工学部 教授
- 吉田 圭秀 防衛大学校長
宇宙開発利用部会(文部科学省)
名簿の時点 令和8年7月23日更新(臨時委員は全13名中11名を掲載)
- 山崎 直子 部会長 一般社団法人Space Port Japan 代表理事
- 久保田 孝 部会長代理 明治大学 理工学部 特任教授
- 田中 明子 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 招聘研究員
- 秋山 文野 臨時委員 サイエンスライター
- 大貫 美鈴 臨時委員 スパークス・アセット・マネジメント株式会社 宇宙投資チーム
- 小笠原 宏 臨時委員 東京理科大学 創域理工学部 教授
- 笠原 次郎 臨時委員 名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授
- 金井 宣茂 臨時委員 JAXA 宇宙飛行士
- 木村 真一 臨時委員 東京理科大学 創域理工学部 教授
- 神武 直彦 臨時委員 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授
- 高橋 忠幸 臨時委員 東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 特任教授
- 鶴岡 路人 臨時委員 慶應義塾大学 総合政策学部 教授
- 村松 加奈子 臨時委員 奈良女子大学 研究院自然科学系 教授
- 山室 真澄 臨時委員 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授
- 吉井 信雄 臨時委員 東京海上日動火災保険株式会社 宇宙保険専門部長
お金
このテーマに束ねた40事業。令和7年度当初 2,214億円 → 令和8年度要求 3,386億円。
注目点
- 12月頃の宇宙政策委員会で、次期宇宙基本計画の論点整理に打上げ年30件・50件の目標や射場の国家インフラ化がどこまで書き込まれるか。
- 年末の令和9年度予算編成で、宇宙戦略基金(要求1,286.5億円)と「強く豊かな日本」投資枠5,357億円がどう措置されるか。
- 10月20日予定のMMX打上げ(H3 10号機)で、H3の信頼回復が続くか。
- 12月予定の宇宙活動法施行規則案のパブリック・コメントで、試験打上げや非衛星物体の認定基準が具体化されるか。
- 宇宙庁構想を含む司令塔体制の見直しが、基本計画の骨子(R9年1〜2月頃)に入るか。
出典
- 内閣府 宇宙政策委員会 開催状況
- 宇宙政策委員会 第124回 議事次第(R8.9.28)
- 宇宙政策委員会 第124回 議事要旨
- 宇宙政策委員会 第123回 議事次第(R8.5.21)
- 宇宙政策委員会 第122回 議事次第(R8.2.24)
- 宇宙開発戦略本部 開催状況
- 宇宙活動法の見直しに関する小委員会
- 参議院 議案情報:宇宙活動法等改正案
- 文部科学省 宇宙開発利用部会
- 内閣府 宇宙戦略基金
- 防衛省 宇宙領域防衛指針の策定について
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